アレルギー科・呼吸器科・心療内科
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診療のご案内


スギ花粉症の減感作療法について

 
 

1.減感作療法の基本的な考え方

 
「減感作療法」はスギ花粉症だけではなく、喘息・食物アレルギー・蜂アレルギーなどの治療にも用いられます。アレルギーの原因物質(抗原)を症状が出ない程度のごく少量から投与して、一定の間隔で治療効果が現れる「維持量」まで増量し、維持量到達後はそのままの量で投与を続けます。
 
継続的に抗原を投与することにより、過剰な免疫反応(=アレルギー)を抑制し、アレルギーを「根治させる」ことも目指す治療法です。
「免疫療法」とも呼ばれています。
 
スギ花粉症では、エキス状にしたスギ花粉抗原を用いて行います。
 
 

2.スギ花粉症の減感作療法

 
注射法と舌下法の二つの治療法があります。
 
①注射法(皮下注射による免疫療法:SCIT
 
数十年以上前から行われている方法で、スギ花粉抗原を皮下注射する治療法です。
 
治療開始時の抗原量は0.002JAUJAUはスギ抗原量の単位です)というごく少量ですが、治療開始後は週に1回(急ぐ場合は週2回)のペースで抗原量を増やしながら注射を続け、治療効果が現れる660JAU程度の抗原量に達した時点で「維持量」にします。
 
その後は維持量での注射を2週間から月に1回の間隔で続けます(維持療法)。維持療法の継続期間は35年以上が好ましいとされています。
維持療法中に3ヶ月以上間隔があくと初めからやり直しということも起こり得ますのでここは根気が必要です。
 
維持療法中も、シーズン前(12月から3月頃まで)の時期に注射間隔を週一回に短縮すると治療効果は更に高まります(シーズン前減感作)。
 
注射法は3歳から実施可能で、シーズンに関係なく始めることができます。
 
②舌下免疫療法(舌下投与による免疫療法:SLIT
 
スギ花粉抗原を舌下粘膜から吸収させる治療法です。「舌下免疫療法(舌下法)」と呼ばれています。 錠剤は毎日自宅で服用します。スギ抗原を含んだ錠剤を舌の下(舌下)に1分間止め置いてから飲み込むという手順です。
 
はじめの1週間は2,000JAUの錠剤を投与し、2週間目からは維持量として毎日5,000 JAUの錠剤を舌下投与します。維持療法の期間は注射法と同じ35年間で、その間毎日舌下投与を行います。
 
痛みもなく自宅で治療ができるので手軽ですが、スギのシーズン中には始められないとか、錠剤を舌下する前後2時間以内は激しい運動・入浴・飲酒を控えるなど多少の制約があります。また維持療法中の抗原投与量は注射法に比べて遥かに大量ですが治療効果は注射法よりも劣り
ます。
 
 

3.減感作療法の治療効果

 
きゅうとく医院ではスギ花粉症の症状を次の 0から 4に設定して重症度を判定しています。
 
0:全く症状なし。気分は「晴れ晴れ」。
1:花粉が飛んでいることを「感じる」が不快な症状はなく薬はいらない。
2:症状があり薬があれば助かるが、なくても何とかなる。
3:症状が強く快適に暮すためには薬が必要。ないと不安。
4:症状が極めて強く集中困難。薬が手放せない。ないと生活困難。気分は「泣きたい」。
 
この重症度の変化を調べることにより治療効果が判定できます。
 
①注射法の治療効果

(1)平成 21年はスギ花粉の大量飛散年でした。この年に注射法を行っていた 44名の患者さんの症状を「過去の大量飛散年」と比較しました。
右のグラフのように症状は明らかに改善していました。大量飛散年であっても症状 (0)13.6%、 (1)50.0%、 (2)29.6%という結果であり、 93.2%までの人が薬を使わなくても快適に暮せるようになっていました。
 
(2) 令和 6年も大量飛散日が多い年でした。この年の注射法を行っていた患者さん 54名の症状は、 (0)10名( 18.5%)、 (1)19名( 35.2%)、 (2)21名( 38.9%)、 (3)4名( 7.4%)、 (4)0名( 0.0%)という結果でした。 92.6%までの患者さんが「薬がなくても何とかなる」ところまで改善していました。平成 21年の調査とほぼ同じ結果でした。
 
(3)注射法を 3年以上続けた場合には、「中止後も 45年間は 8090%の効果が維持される」ことがわかっています。
 
(4)小児期のスギ花粉症に注射法を 2年以上実施した場合には、成人後も 76%の人に症状の消失・改善が認められます。1年未満の実施期間では成人後の改善率は 16%でした。
 
(5)維持療法のエキス量を 200600JAUまで増量した場合には、 5年経過時点で 35.5%までの人が「 2シーズン以上無症状」になり、中止した場合の再発率は 4.7%と報告されています。
 
(6)小児のアレルギー性鼻炎に注射法を実施することにより喘息への移行が予防できると報告されています。注射法を 3年間実施したグループでは、その後の喘息の発症率が 24.1%でしたが、実施しなかったグループの発症率は 44.4%でした。
 
舌下法の治療効果
 
注射法のような大量飛散年間での調査は行っていませんが、平成 24年のエキス製造メーカーのデータでは、「まったく無症状」な人が 5.4%、「症状はあっても軽い」人は 72.5%でした。
 
 

4.副作用

 
注射法の主な副作用は注射部の発赤と腫れです。腫れは治療効果の現れでもありますから、「直径3㎝以内で3日以内に治まる」程度であれば「程よく効いている」状態であり心配ありません。腫れが「5㎝以上3日以上」になったら注意が必要です。必ず医師に報告して下さい。全身性の副作用であるアナフィラキシーの出現は二百万回の注射に1回程度といわれています。              
 
舌下法では軽い副作用として、口腔浮腫14.4%、咽頭刺激感14.3%、耳の痒み12.5%、口の痒み8.6%などが現れます。アナフィラキシーショックの出現率は「極めて低値」とされています。
 
 

5.これからのスギ花粉症の減感作療法についての考え方

 
舌下法の効果は注射法よりも弱いとされています。そのため当院でも大量飛散時に舌下法では症状が抑えきれない患者さんがしばしば認めらます。その結果何名かの患者さんは舌下法を数年間続けた後に注射法に切り替えられています。
 
地球温暖化によりこれからは大量飛散年が続く可能性が高まっています。従って今後は舌下法では改善しないケースが増えてくるのでは?と思われます。このような理由できゅうとく医院ではスギ花粉症の減感作療法には注射法をお勧めしています(もちろん舌下法も実施可能です)。特に小児期のスギ花粉症では注射法により成人後まで高率に症状が抑えられますから特にお勧めといえます。
 




このページの作成にあたっては、以下の先生方のデータも参考にしています。
奥田実・馬場廣太郎:日本医師会雑誌119巻第4号1988、福田博国他:日本医事新報3907号1999、岡本美孝:メディカル朝日2006年1月号、大橋淑宏:日本医師会雑誌136巻第10号2008

 
 
 
 

 

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