アレルギー科・呼吸器科・心療内科
小児科・内科
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生活療法


「生活療法」の進め方

 
 

1.生活療法の基本的な考え方

 
「専門外来のクリニックポリシー」でもお話ししましたように「生活療法」はもともとは小児重症難治性喘息の根治のために考案された治療法です。昭和30年代に小児喘息を重症難治化させる最大の要因が不安であることが明らかになり、その不安をコントロールすることにより小児重症難治性喘息を劇的に改善させることができるようになりました。
 
そしてこの「不安をコントロールする作用」は喘息のみならず、不登校や引きこもり、新型うつ、適応障害、パニック障害、パーソナリティ障害、職場ストレスなどのさまざまなメンタル不調や、育児不安、人間関係がうまくいかない、社会の中に居場所が作れない、などという状況の改善にも効果があることが分かってきました。
 
その理由としてはこれらの問題における心理的ストレスの根底は「毎日の生活がうまくいかなくて困った状況だがその解決法が分からない」という点で共通しているからです。この「うまくいかないが解決法が分からない」という不安が継続した時に、うつ気分も高まって様々な心身症とかメンタル不調が現れていたのです。ですからこれらの不安を上手にコントロールして解消できるような「自我」を充実させれば、様々な症状も「自然に治まっていく」ことになります。
 
「精神科と心療内科の違い」でもお話しましたように、自我とは「その人が毎日の生活の中で物事をどうとらえ、どう感じてどう行動するか」という、その人の「思考と感情と意思と行動のありよう」の全体を指すものであり、その人の性格や人柄、生きる姿勢などの根源になります。
 
ですから、人生の様々な場面における「うまくいかなくて困った状況のとき」に「こうすれば大丈夫」という選択が自然にできるような自我(生きる姿勢)を自分の中に作り上げることができれば、この「大丈夫」という気持ちが不安をしっかりと抑えて症状も抑えてくれるようになります。
生活療法はこの「不安をコントロールするための自我」とか「思い通りにならない時にうまく乗り越える力」を患者さんの中に作り上げる治療法ということになります。そして患者さんの日々の暮らしの中の「行動のありよう」を調整することが治療そのものになりますから、生活療法は「認知行動療法」を応用した治療法ということになります。
 
 

2.生活療法の具体的な進め方 

 
(1)治療の進め方全体のまとめ
 
生活療法の具体的な進め方は、①患者さんの悩みを整理する、②その悩みの解決のための「生活療法」の方針を立てる、③油断なく「健全生活」をやり遂げる、という流れになります。
 
治療にあたっての医師の役割は、患者さんの悩みや困りごとを整理して「どう暮らせばその悩みが解決するのか?という治療方針を策定して患者さんに提案する」ことと、「その治療をうまくやり遂げられるように助言する」ことであり、この二つが治療全体の8割以上を占める最も重要な部分になります。「治療方針の提案とやり遂げるための助言」が治療の根幹になる訳ですから「医者が薬、言葉が薬」ということになります。
 
そして治療を順調に進めるためには「診察の内容を正確に理解して頂く」ことが極めて大切になります。そのための対応としてきゅうとく医院では「診察内容を録音して自宅で聞き直す」ことをお勧めしています(医師側は録音しません)。診察の内容を自宅で聞き直すことにより、治療方針を正確に理解できますし、次の(2)で述べる「誘導」も確実に防止できますから、治療効果は大幅に高まります。
 
生活療法は心療内科の予約の時間帯(月・火・水・金の14時から16時まで)に、予約制で「週1回1回15分」のスケジュールで行います。週1回の通院は大変なようですが、録音された15分の診察は録音していない1時間の診察と同等以上の治療効果があり、最も効率よく治療が進みます。
 
その結果として治療効果が現れるのは比較的速やかであり、個人差はありますが2~3ヶ月で7割までの患者さんに何らかの改善(変化)が現れます。不登校であれば2~3ヶ月で7割弱までは登校が再開できます。結果として治療期間も短縮できます。効率よく治療が進むことによるもう一つのメリットは、「自費によるカウンセリング」を受ける必要がなくなることです。すべての診療が健康保険で対応できます。
 
生活療法では患者さんが自分自身の悩みに直面して整理することが大切になりますから、大災害・戦争・犯罪・生命の危機を伴う深刻な病気・虐待・DV・パワハラなどのような、環境側に極めて過酷で劣悪な状況があるような場合には効果は限定的になります。また感情のコントロールが困難で悩みに直面すること自体が辛いような場合には、服薬治療とか自律訓練法、EMDRなどを用いて「まずは落ち着くこと」を優先します。
 
(2)自分の問題を整理することが治療の第一歩
 
生活療法を始めるためにまず大切なことは患者さん自身が「自分の悩みをま
とめて整理する」ことです。自分の悩みをまとめて自分自身または話を聞い
てくれる人に「正しく伝えられる」ように整理するということになります。
 
これはトラウマコントロールの手法の一つでもあります。思考と感情は非常に流動的ですから、まとまっていないといつまでもグラグラとして不安定な状況が続きます。このグラグラとした不安定な状態から逃れたくて医師に悩みを次々に訴えてしまうことも珍しくはありません。辛さから逃れたいという患者さんの行動は妥当ですし気持ちもよく分かります。しかしこのまとまっていない悩みを医師が整理してしまうのは好ましくないこともあります。
 
患者さんの「まとめ切れていない悩み」を医師が整理しようとしてしまうと、患者さんがまとめ切れていない部分を「医師がつじつまを合わせてまとめてしまう」ことが起こりうるからです。これは医師が患者さんの思考を「誘導」してしまうことになり、患者さんの悩みを誤認して時には治療の方向性を間違わせることも起こり得ますから注意が必要になります。
 
このような「誘導」などにも配慮しながら患者さんの話を傾聴して「患者さんの自我状態と生活環境とのかかわり方を分析して、患者さんの悩みを整理する」ことが治療の始まりになります。
 
そして患者さんが自身の悩みを適切に整理できた時には、それだけでも気持ちは劇的に明るくなります。悩みが整理できることにより「この先はこうすればいいんだ」という「進むべき道筋が見えてくる」からです。道筋が見えてくることによって、思考と感情のグラグラが治まりますからその時点で(症状全てが改善するところまではいきませんが)患者さんの自我は極めて安定します。
 
この状態に至った患者さんは皆さん異口同音に「のど元またはみぞおちのあたりから下腹部にかけてブワッと温かくなったように感じる」とおっしゃいます。自律訓練法の第5公式の「お腹が温かい」ところまで一気に到達したかのような状態に至り、極端な場合にはこの時点で症状が2~3割改善して、少量の睡眠薬なら中止できてしまうことも珍しくありません。「冷え症」が(体を温めなくても)かなり改善してしまうこともしばしば認められます。「安心」には体を温める効果があるようなのです。
 
(3)「健全生活の励行」が治療の中心
 
自分の問題が整理できたら次はその問題の根本的な解決を目指して「生活療法の方針を立てる」ことになります。当面の方針としては「それが実行できればたとえわずかであっても症状は必ず改善に向かう」という「行動目標」を設定します。
 
例えば体の病気である高血圧や糖尿病であれば、前者は「運動(減量)と減塩」、後者であれば「運動(減量)と食事療法」が病気そのものを改善させて減薬をも可能にする行動目標ということになります。
 
生活療法では「患者さんの自我が健全になり不安が解消する」方向の心身両面での行動目標を設定することになります。その内容は「早寝早起き・日中まめに動く・軽い運動」程度のものから始めることもありますが、最終的には患者さんの不安を解消して症状を取り去ることができるところまでの行動目標を策定する必要があります。ジムのトレーナーがダイエットの計画を立てたり、山岳ガイドが登山者の実力に合わせて登山計画を立てたりするのに似た作業になりますが、このようにして策定された生活方針を私たちは「健全生活」と呼んでいます。
 
患者さんの状況を十分に聞き取って全体の状況を把握したうえで、生活方針の内容を練り上げ、患者さんに適した「健全生活」を策定することが本格的な治療の第一歩になります。ここで策定した内容の善し悪しがその後の治療結果に大きく影響しますから、この「健全生活の策定」が医師と患者さんが共同して行う最初の最も重要な仕事になります。「智慧を絞って策を練る」というようなイメージの作業にもなります。そして健全生活が適切に策定されれば、あとはそれを実行することにより症状は自動的に改善していきます。
 
患者さんが自分の悩みを整理して「自分自身のありよう」を理解した上で、医師にもその「ありよう」を正しく伝えながら、毎回の診察を通して健全生活を調整しながら励行することにより、日常生活内での、家族以外の身近に接する人達の中からも「気持ちを分かってくれるような心理的な仲間・身内」が増えていきます(というよりも患者さん自身が「増やすことができる」ようになっていきます)。このようにして医師以外にも仲間や身内が増えていくことにより活動範囲も拡がり、日々の暮らしの中での安心感・安定感も高まります。これが「患者さんの自我が健全化に向かった」ということであり「居場所を作る力が伸びてきた」ということにもなります。
 
生活療法が順調に進めば2~3カ月以内に症状は改善に向かい始めますが、治療開始後に様々な理由で健全生活の励行が難しくなることも珍しくはありません。
 
このような場合は患者さんの自我の中の「思考・感情・意思」のいずれかが原因になって「行動」を妨げていることになりますから、その思考習慣などを分析して患者さんが「思い通りでなくてもいいからうまくいく」方向に進めるような対策を提案して助言することが、医師が行う二つ目の重要な仕事になります。
 
 

3.生活療法の理解のための「お勧めの言葉」

 
生活療法の基本的な考え方を理解するために参考になる「名言」がいくつもあります。その中でも特にお勧めの言葉をここでご紹介しておきましょう。
 
マザー・テレサの有名な言葉に「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから」というものがありますが、この言葉は自我と心身症やメンタル不調など(=運命)との関連を的確に言い表している名言といえます。
 
聖路加国際病院の元名誉院長・日野原重明先生は「習慣は第二の性格だとも言えます。人の心と体の習慣が私たちの人生全体を作り上げていくのです。人生の岐路に立った時、ちゅうちょなく、ごく自然に『よい方向』を選び取れるような『よい習慣』を身につけられるように、互いに努力したいものです」とおっしゃっています。
 
この言葉はまさに生活療法の本質を表しているといえます。「よい方向性を選び取れるようなよい習慣を身につけるように努力すること」が生活療法そのものだからです。
 
栄養生化学者・佐藤富雄先生の次の言葉は、気管支喘息とか起立性調節障害、過敏性腸症候群、パニック障害などの心身症を治療する場合に非常に参考になります。
 
「自律神経は事実に関係なく自分の思い込みを無条件に受け入れ、体にさまざまな化学反応を起こします。自律神経は『こうなるかも』と思っただけで反応します。常に楽天的でいることが一番です。『体は心の召使』です」。
「心と体の結びつき(=自我と身体症状の関連)」についてとても分かりやすくまとめられています。
 
この三つの言葉は生活療法を理解するための「お勧めの言葉」であり、更にはさまざまな心身症やメンタル不調を解決させるための道筋を示す言葉でもあります。
 
きゅうとく医院独自の「お薦めの言葉」もあります。
 
「今はこれでよし。こんな私で文句があるか(今の私で大丈夫)。困っても悩まない、できれば楽しむ」が、治療開始前の気持ちの整理のためのきゅうとく医院のお勧めの言葉です。
 
「困る」と「悩む」はまったく別物ですから、そこをはっきりと理解して区別できるようになれば思考と感情は相当に落ち着きます。当院ではこれを「プチ開き直り」と呼んでいます。
 
 
 

 

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ぜんそくは自分で治せる

 
気管支ぜんそくの臨床は、いままでの『わからない・治らない』という時代から『原因を分析し実行すれば治る』時代に入ったのです...」。

 

 

ぜんそく根治療法

 
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不登校 ひきこもり

 
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