ぜんそくジャーナル

 

155号ジャーナル

重和先生講演録2 

                            
そこから先は、「お腹に問題がないと(身体医学の)先生に言われたから、じゃあ病気じゃないんだ。この子はさぼってるんだ。」と親が叱って登校させることもありますし、多少気配りをしてくれる先生であれば、「お母さん、心の問題かも知れないから『心療内科』へ行きなさい。」と言ってくれることもあります。
「心療内科」ではそれなりに納得できる説明をしてもらえます。
「要するにこの子は学校へ行くのがストレスなんです。なぜかと言うと、不登校の子の腹痛というのは、学校があるときの朝にだけ出てくることが多い。学校に行かないと決めるとおさまってしまうことがある。夏休みなんかにはピタッと止まってしまう。ということは、体の病気ではなく、学校に行くことがストレスになって、それが腹痛を引き起こしているのでしょう…」と、そういう説明をしてもらえます。
 
そして心身医学的な治療、箱庭療法とかカウンセリングなどに進んでいくのですが、一般的にあまり効果はありません。不登校に対しては、身体医学は無力、心身医学も非力なのが現状です。
その理由は心身医学も大事なことを見落としているからなのです。
それはなにかと言いますと、「なぜこの子は学校に行く前にお腹が痛くなるような個性になっているんだろうか」という基本的な問題です。大多数の子は腹痛もなく登校しているわけです。となると、この子だけ特別な何かがあるわけです。反応性が。
 
その反応性が実はこれからお話ししますけれども、育て方によって作られているのです。学校に行こうとするとお腹が痛くなるように育っていると考えればよいのです。
この「育つ」という言葉は、非常に的を射た言葉です。
人間形成医学で言う人間形成とは、人間が「育つ」ということですから。
どのように人間形成していくかということは、その人が、性格と体質の面でどのように育っていくかということなのです。
ですから、そこまで踏み込んで考えれば、登校拒否というのもそれほど難しい問題ではありません。
 
例えば現在問題になっているいくつかの悲惨な事件。小さな女の子をさらって殺してしまったとか、いろいろありますが、なぜあんなことが起きるのだろう、わけがわからないと思われています。精神科の先生や評論家は、二重人格だとか性格異常だとか、いろいろ評論はありますけれど、結局はよくわからないという結論です。
こういった問題も人間形成医学的に考えればそう難しくはないのです。結論は一つです。犯人はああいう個性に育ったのです。だからあのような事件を起こしたのです。

横浜では筑波大学のお医者さんが、奥さんと子供を殺してしまったという事件がありました。教養のあるお医者さんが、何故そんなことをするのだろうかとも言われました。
たしかに、医者としての知識はありますけれども、人間としての賢さの部分に問題があったわけです。あのお医者さんも我々の立場から見れば、ああいう個性に育ったと言うことになります。ですからあのような事件を起こしたわけです。
こんな例はもう枚挙にいとまがありません。
 
北海道の小樽で女子高生二人がおばあちゃんをぶん殴ったか蹴飛ばしたかして、遊ぶ金をひったくったと。なんでそんなバカなことをするのかと周囲は思いますが、結論は一つです。そういう高校生に育ったのです。だからやったんです。
人間形成医学というのは、人間のこのような面を考えていく医学です。人間はどのような過程を経て人格を形成するのか、育っていくのか、という面を研究する医学なのです。
この立場に立てば、不登校は起きるべくして起きたということもわかります。
(続く)