ぜんそくジャーナル

 

155号ジャーナル

疲れると喘息になるか

 
■疲れて喘息になることはない??
「あの当時、仕事が大変でした。忙しいし、気も使いました。一段落ついてからカゼをひきやすくなり、ヒューヒューいうようになりました」「水資源公団につとめて四国でダム建設をしていました。予定より難工事で苦労しました。解決してしばらくしたら喘息になってしまいました。転勤して愛知県に来ましたが、仕事は楽なのに喘息は治りません。今年の春からかえって重症になってしまいました」「夫が病気で、看病が大変でした。その年から喘息になりました。疲労が原因と思います」外出していつもより疲れたから喘息が出た。旅行で疲れたので家に帰ったら、喘息発作が現れた。
以上のようなケースでは患者さんは、つい「疲れると喘息になる」と考えがちなものです。
これは、ほんとうに、仕事や運動で疲れて、そのために発作が起こるのでしょうか。
 

■緊張からの解放が犯人

「疲れで発作が出た」という患者さんの場合、詳しく話を聞いてみますと、仕事が大変だった、看病が大変だったという最中にはむしろ発作は起こっていないことが多いのです。ほとんどみな、仕事が終わって「ほっとした時」、つまり、心身の緊張がゆるんだ時に発作が起こっているのです。
患者さんが「疲れたから発作が起こった」と考えているのは実際には疲れたためではなく、緊張している時にはかえって喘息発作は起こらず、「緊張からの解放」が発作につながっているのです。
それでは命にかかわるほど疲れるような緊張が続いた時、喘息はどうなるのでしょうか。
 
喘息のことがいまほど完全に分かっていなかった時代、つまりいまから30年以上も昔の文献を調べてみると、実にいろいろなことが分かります。
子供の頃に喘息になり、それが20年以上も続き、成人喘息になってしまう患者さんが、昔もそんなに珍しくありませんでした。この状態になってしまうと、昔は、医者も患者も、もう喘息は治らないと思ってしまいます。
ところが、このような青年の喘息患者が、戦争に行っているあいだは申し合わせたように、「ピタリと喘息が出なくなった」「戦争を機会に治ってしまった」という文献がとても多いのです。
 
いまのように喘息の総合医学説の分かっていない時代ですから「不思議にも治った」という程度の考え方しかしていませんでした。
疲れると喘息が出ると考えている人、あるいは信じ込んでしまっている人は、この喘息と戦争の関係を深く考えてみて下さい。もし、疲れて喘息になるのなら、幾年も戦争に行っていればその間は喘息がひどくなっていたはずです。ところが結果は全く逆なのです。
 

■やる気の生理

「疲れると喘息発作」というのは、誤った判断です。やる気の時にはむしろ発作は起こらず、緊張がゆるんでほっとするという「無意識の心の動き」で発作が起こってしまうように、人間の脳の仕組みはできているのです。
脳の仕組みのつくられ方は、千差万別ですから、緊張からの解放、ほっとすることで発作が起こる起こり方も千差万別です。
ちょっと軽い発作の起こる人、死ぬほどひどい発作の起こる人、それはその人の性格によります。
心と体の仕組みの面からみた場合、このメカニズムはどうなっているのでしょうか。
よく喘息の勉強をした患者さんなら、ここまで説明すれば、その仕組みは分かるはずです。
 
会報21号、あるいは初診の時にお渡しした喘息の仕組みの紙を見て下さい。
第三の脳の緊張がゆるむ ⇒ 交感神経の緊張がゆるむと喘息発作となる。ただこれだけのことです。この状態が強く、しかも長く続くと、間脳・下垂体・副腎の働きも低下、重症難治性喘息になってしまうこともあります。
対策については久徳クリニックでおたずね下さい。