専門外来のクリニックポリシー
1. 気管支喘息(成人)
成人喘息の分野できゅうとく医院が最も心がけていることは「正確な診断」です。
もともと気管支喘息そのものが、心理的な要因とか身体的な要因、アレルギー、気道過敏性などの因子が複雑に絡み合った疾患なのですが、成人喘息になると気道のリモデリングのような喘息性の変化に他の呼吸器疾患なども合併して病像がさらに複雑になることも珍しくありません。
喘息以外にも、咳喘息、アトピー性咳嗽、肺気腫(COPD)や慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、副鼻腔気管支症候群、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、アレルギー性肺アスペルギルス症などや、逆流性食道炎、心因性呼吸困難、過呼吸症候群などの疾患が関わってくることは成人喘息ではよくあることなのです。
これらの疾患が重なりあって複雑化した喘息では、たとえ息苦しさが発生したとしても「その息苦しさの全てが間違いなく喘息によって引き起こされている」という保証はできません。「喘息もあるにはあるがそれは大して悪さをしておらず、他の合併症が息苦しさを引き起こしている」という可能性もあり得るからです。そしてこのような場合には、喘息の治療をどれだけ頑張っても症状は改善しないことになります。
成人喘息においては「患者さんが訴える症状のどこまでが喘息によるものか?」を正確に診断しなければならないのです。そして「喘息の正確な診断」のために最も必要なものは十分な病歴調査(過去の症状の正確な聞き取り)であり、血液検査や呼吸機能検査などではありません。これらの検査は喘息の経過観察には有用ですが、喘息を診断する際には参考程度にしかならないのです。
病歴調査では過去の症状を時系列に沿ってそれこそ徹底的に、「重箱の隅をつつくような細かさ」で聞き取ります。この聞き取りによって過去の症状を正確に把握することができれば、「その苦しさは喘息の典型的な症状であり喘息以外では起こり得ない」とか「その症状なら喘息と考えてもおかしくはない」とか「その症状は喘息では絶対に起こらない」、「その症状は状況によっては喘息でも起こりうるから今後も観察が必要」などと状況が整理できていきます。
このように整理していくことによって、「あなたの喘息は極めて軽症でアレルギーもわずかですから、吸入ステロイドは使わなくても鍛練だけでよくなるはずです」とか「喘息もあるにはありますが喘息による症状は全体の3割ほどで残りの7割は肺気腫によるものです」とか「明らかに心因が関わった重症に近い喘息ですが十分に治せます」とか「過去の症状からはあなたの症状は喘息ではなく今まで喘息になったこともないようです」などとの「正確な診断」が下せるようになります。ですから病歴調査は時にはセカンドオピニオンとしての役割を果たすこともあります。
そして治療を必要とする喘息であれば聞き取った病歴に沿ってその患者さんに最も適した治療計画を立て、「あなたの喘息はこうすれば治せます」という治療方針を設定します。病歴が詳しく聞き取れているほど精密な治療方針を立てることができますから治療効果も高まります。逆にいえば病歴が曖昧であると精密な治療方針は立てにくくなります。このように病歴調査は手間はかかりますが極めて重要な作業なのです。
吸入ステロイド療法が始まるまでは、深刻な副作用が強い全身性のステロイドを少しでも減量できるように、詳細な病歴をとって治療効果を高めることは喘息専門医の常識だったのですが、平成4年頃から小児・成人ともに「喘息治療管理ガイドライン」が制定され、喘息は「治す」よりも「吸入ステロイドでコントロールする」治療が一般化してしまいました。
吸入ステロイドは副作用も少なく容易に処方できますし効果もほぼ確実です。そのためもあって現在では喘息専門医と呼ばれる立場の医師であっても吸入ステロイドで症状をコントロールする治療しか行わないことが普通になってしまいました。
その結果として喘息を治すために必要な詳細な病歴調査を行う医師も少なくなり、正確な診断が下されないままに不要または過剰な治療が行われることも増えてきました。きゅうとく医院ではこのようなことが起こらないように「正確な診断」行うことをクリニックポリシーとしています。
成人喘息での(小児喘息でも同じですが)2つ目のクリニックポリシーは「喘息根治を目指した治療を患者さんに提供する」ことです。
詳しくは「喘息についてのきゅうとく医院の考え方」をご覧ください。
2. 小児喘息
小児喘息の分野できゅうとく医院が重要視していることは、まず第1には成人喘息と同様に「正確な診断」です。そのためには成人喘息と同じように詳細な病歴調査を行います。
小児喘息における2つ目のクリニックポリシーは、「小児喘息を思春期以降に持ち越させない」とことです。
もともときゅうとく医院では「乳幼児の喘息は6歳までに、小学校低学年の喘息は10歳まで、高学年は15歳までに喘息を治しきる」ことを目標としています。その理由はこれらの年齢が小児喘息を治しやすい節目の年齢になるということと、それ以上に重要な問題として「小児喘息は大人になるまでに半数程度しか自然治癒せず約半数は大人まで持ち越される」という現実があるからです。
ガイドラインが推奨する治療は「吸入ステロイドで喘息をコントロールする」ための治療であり「喘息を治す」ための治療ではありません。ですから吸入ステロイドで喘息が良好にコントロールできていたとしても、それは「喘息を治すことは棚上げにしてステロイドで目先の発作を抑え続けた」ということに過ぎないのです。
従って吸入ステロイドを続けても喘息そのものが改善に向かうという保証はなく、2023年版の小児気管支喘息ガイドラインでは「小児期に発症した喘息の思春期から青年期にかけての緩解率は約30~40%であり重症例では更に寛解率が低下する」とされています。
つまりガイドラインが推奨する吸入ステロイドによる治療を続けても喘息児の60~70%までが思春期以降まで喘息を持ち越すということになります。
更に近年になり「小児喘息の思春期での寛解率は8歳時点での呼吸機能などで予測できる」とか「13~15歳の喘息児の35.2%までが重症持続型以上、16歳以上では36.3%までが中等症持続型以上」などの事実もわかってきました。小児喘息は思春期まで持ち越してしまうとかなり高率に重症化することがわかってきたのです。
ですから10歳(理想的には8歳?)までに小児喘息を治しきって思春期以降の重症化の「元を断つ」ことは喘息児の将来のためにも極めて重要な意味を持ちます。
また「7歳及び10歳時の喘息の重症度は成人期の喘息症状に影響する」とか「小児期の重症喘息は50歳まで喘息を継続させるリスクファクターになりうる」こともわかっています(2014 年のMelbourne Asthma Study)。ですから10歳時点で喘息があるということは50歳まで喘息を持ち越すリスクが高くなるということになります。逆に10歳までに喘息を治してしまえば喘息を大人まで持ち越すリスクは極めて低くなります。
当院院長の著書「ぜんそくは自分で治せる」の、「治しやすい子どものぜんそくを大人のぜんそくに移行させるな」の項目では、「ガイドラインと専門医が小児ぜんそくの成人ぜんそくへの持ち越しをお膳立てしてしまったら、それは医原性の難治化であり喘息児の将来のことが考えられていない」と述べられていますが、現在はこの傾向が明らかに強くなっていると感じられます。
3番目の重要なポイントは総合根本療法であれば小児喘息を治すことはそれほど困難ではないという事実です。患者さんの状態に合わせて精密に計画された生活療法により、重症な小児喘息を「朝日に消える朝霧のように治してしまう」ことも不可能ではありません(ぜんそくジャーナル142号「Y君のお母さん」なども参考にして下さい)。
平成17年の久徳クリニックでの調査では、4歳から12歳の34名(男子20名・女子14名)の患者さんに総合根本療法を行った結果は、平均2年9ヶ月の治療期間で、全体の重症度は初診時の「間欠型(時々軽い症状が出るが吸入ステロイドは不要)14名、軽症5名、中等症4名、重症9名、最重症2名」から調査時には「間欠型31名、軽症2名、中等症1名、重症0名、最重症0名」まで改善していました。
吸入ステロイドは17名が使用していましたがそのうち15名までは使用中止できています。3年未満の治療期間で88.2%までの患者さんが吸入ステロイドを中止できたことになります。
そして調査時の間欠型31名中、1年以上無発作の患児は8名、2年以上無発作が6名、3年以上無発作1名でした。これらの事実からは総合根本療法によって小児喘息を寛解から根治に向かわせることはそれほど難しくはないことがわかります。
小児期の喘息が思春期まで持ち越された場合には成人喘息としての治療を行うことになります。総合根本療法であれば思春期の重症喘息であっても十分な治療効果は得られますが、思春期になると学業とか部活などに時間を取られ治療に専念できなくなることもしばしば起こります。そうなりますと残念ながら十分な治療効果は得られず成人喘息に移行する確率が高くなります。
以上のような理由から、きゅうとく医院では小児喘息にはなるべく早くから総合根本療法を開始して、10歳から遅くとも15歳までには治しきって「喘息と縁を切る」ことをクリニックポリシーとしています。
3. 心療内科
きゅうとく医院の心療内科は精神科ではありませんから、治療の主体は「心療内科の治療の三本柱」である「自律訓練法・交流分析・認知行動療法」になります。そしてもう少し詳しく説明しますと、きゅうとく医院の認知行動療法は、昭和30年代に名古屋大学医学部小児科アレルギークリニックで始められた、重症難治性小児喘息児への「生活療法」を源流にしています。
生活療法は「治療の三本柱」を応用して「不安のコントロール」を進めることを目的として考案された治療法です。重症難治性小児喘息の治療を進めるうちに、「不安」が小児喘息を重症難治化させることがわかってきました。そしてその不安をコントロールすることがステロイド剤よりもはるかに優れた治療効果を発揮して小児の重症喘息を劇的に改善させたのです。
更にはこの不安をコントロールする効果は、気管支喘息のみならず、不登校とか成人後の適応障害や新型うつ、社会不安障害、ひきこもりなどのさまざまなメンタル不調の改善にも有効であることが明らかになってきました。
きゅうとく医院の心療内科では、この生活療法によって患者さんご自身が「思い通りではなくても不安を持たずにより良くうまく生きていける」方向に自我を調整することにより、メンタル不調を改善させて薬も中止することを目指すことをクリニックポリシーとしています。
詳しくは「生活療法の進め方」もご覧ください。
4. 医師が薬・言葉が薬
生活療法を実行するうえで医師が行う最も大切な仕事は薬を出すことではありません。一人一人の患者さんに対して「あなたの喘息はこうすればよくなります」とか「子供さんの不登校はこうすればよくなります」などという「生活療法の目標設定」とか「改善のための全体の筋道」などについて詳しく説明することが医師が行う最も大切な仕事になります。
生活療法が良好に実施できれば心身の不安定な状態は自然に改善し、症状も自然に治まっていきます。ですから生活療法について説明する「医師の言葉」が症状改善のための薬ということになります。このような理由で「医師が薬・言葉が薬」という言葉もきゅうとく医院のクリニックポリシーの一つになります。
人間形成障害
この人間形成障害型の社会では、親がまったく普通の子育てをしているつもりであっても、子供たちに様々な問題が「予測もできない状況で自動的に」現れてくるようになります。
ぜんそくは自分で治せる
気管支ぜんそくの臨床は、いままでの『わからない・治らない』という時代から『原因を分析し実行すれば治る』時代に入ったのです...」。
ぜんそく根治療法
通院できない患者さんであっても、自宅で総合根本療法を実行して喘息を治していくことができるだけの知識を執筆されています。
ここまで治せる
不登校 ひきこもり
不登校をご家庭で「治す」ことも「予防する」ことも十分に可能です。不登校の解決は決して難しいものではないのです。